首相の靖国参拝について、市民の意見30の会・東京の声明 06/08/19掲載
市民の意見30の会・東京は、小泉首相の靖国神社参拝に関して、8月16日、以下のような声明を発表、首相官邸にも送りました。
2006年8月16日 市民の意見30の会・東京 小泉首相は8月15日早朝、靖国神社に参拝しました。首相退任間際になされたこの参拝は現役の総理大臣として6度目であり、初めて「終戦記念日」である8月15日になされました。それは公約の履行としてなされ、公用車を用い、「内閣総理大臣 小泉純一郎」と記帳し、昇殿して拝礼するなど、いわゆる「公的参拝」であることをむき出しにしたものでした。私たちは以下の理由で、この6度目の靖国神社参拝に強く抗議します。 1 小泉首相は6年間で6度目の参拝を行ないましたが、それらすべての行為は、憲法20条が厳しく定めている政教分離原則を正面から踏みにじるものです。同原則は、戦前の国家神道が国家主義や軍国主義の精神的支柱として戦争遂行のために果たした役割への深い反省を踏まえたきわめて重要なものであり、それを蹂躙することは、国家による宗教の政治利用への道を切り開くことです。 また憲法99条は閣僚、国会議員を含むすべての公務員に憲法尊重擁護義務を負わせていますが、行政の長である小泉首相の度重なる参拝は同条の明白な違反であり、とうてい許されることではありません。 2 これまで小泉首相は公約として掲げた「8月15日の参拝」を避けてきましたが、今回はあえて同日を選択しました。それは、首相の参拝に反対する世論に公然と挑戦する意図を持つ暴挙でした。独裁者然とした、このような挑発的政治手法は、国民主権に基づく民主政治を破壊し、後世に大きな禍根を残すものです。 3 日本による過去の侵略戦争と植民地支配によって甚大な被害をこうむり、今もその傷跡に苦しむアジア・太平洋諸国、とりわけ中国と朝鮮半島の二つの国は小泉首相の靖国神社参拝に強く抗議してきました。それは、同神社にA級戦犯が合祀されているからだけではなく、首相の参拝が、日本が過去の犯罪を少しも反省していないことを如実に物語っていると受け止めているからです。今回の参拝は、近隣諸国との友好関係を修復不可能なほど傷つけました。 小泉首相はまもなく首相の座を降りますが、彼が犯した罪が退任によって許されるわけではありません。また新たな自民党総裁に誰が選ばれるにせよ、新首相による靖国神社参拝は絶対に許されないことも強く主張します。私たちは、国家による戦没者の慰霊・追悼に反対です。それは戦没者を顕彰することによって「英霊」に続くことを慫慂(しょうよう)し新たな「英霊」を生む《靖国サイクル》にほかならないからです。 私たちは、近隣諸国の警戒心と不信に満ちたまなざしを真摯に受け止め、日本政府に政教分離原則の厳格な履行を要求しつつ、憲法前文に基づく9条の実現をめざして、東アジアと世界に平和を創造する努力を続けることを、あらためて誓います。 |