声 明

 「3・11から1年」  2012年3月8日  市民の意見30の会・東京

 
  • われわれがこの1年で学んだこと

 自然の威力と人間の無力さを改めて思い知らされた東日本太平洋沖地震、人類の英知と科学の粋を集めたとされた東京電力福島第1原子力発電所のあまりにも不用意で取り返しのつかない致命的事故から1年が過ぎた。
 震災で命を落とした2万人もの人びと、家族を失い家も仕事も地域も失った地元の被災者、いまだに大気を大地を森林をそして生命の母なる海を汚染し続け、長期にわたりすべての生物に脅威をもたらす放射能。
 原子力の平和利用の美名の下で、陰に核兵器の開発を目論み、原子力産業の利権に寄生して権力と富を独占してきた政治家、官僚、電力業界・財界と、権力におもね批判精神を忘れたかのようなマスコミ。
 安全を説いてきた「原子力ムラ」の東電、経済産業省、御用学者たちの犯罪的なうその数々と危機に際しての唖然たる無為無策ぶり。われわれはこの1年間でそうした事実を眼にしてきた。

 
  • 被災者の生活再建を

 住民の命と生活を守ることは国の最も基本的な責務である。被災者の物心両面への救援と早急な生活再建への支援に、政府は責任をもって最優先で取り組むべきである。
 軍事費や原子力開発予算は勿論、不要不急な公共事業予算などはすべて復興財源に回し、速やかに地元に一括支給するべきである。第一義的に東電が責を負うべき原発事故についても、被災者の支援と補償を東電との個別交渉に任せてはいけない。

 
  • 情報の全面的開示を

 一刻も早い事故の収束やがれき処理を含む環境対策など、放射能汚染の今以上の拡大を防ぐことは地球と国際社会に対する日本の義務であり、全ての知恵を結集するべきである。
 政策立案を担ってきた政府や東電など権力中枢の無力と隠蔽体質が明白になった以上、権力から疎外され黙殺されてきた在野からの提案をこそ積極的に求めるべきである。
 そのためには、多様な知見を持つ外部の人材を大胆に登用するとともに、海外も含めて広く知恵を求めるべく、内外に対して徹底的な情報の開示を図るべきである。

 
  • 責任の徹底的追及を

 このような事態を二度と招かないためには、ここに至った事実と原因を徹底的に検証し、問題の所在と責任を明確化するべきである。
 放射性廃棄物の恒久的処分方法がないことは明らかであったにも拘らず「将来の人びとの知恵に期待する」と説明を逃げてきた彼ら。巨大な地震の発生や原発に対する隕石・飛行機等の落下、ミサイル攻撃などに対しては厚顔にも「設計上の想定外」を繰り返してきた彼ら。
 うそで塗り固められた発電コスト計算で「最も安い電力」を吹聴してきた彼ら。こうした無責任極まる事なかれ主義が、この世界一の地震列島に54基もの原発の林立を許してしまった原因である。

 
  • 核のない世界を

 われわれはいま、放射能汚染の被害者であり加害者でもある。生物と共生できない人工的な核反応放射能は人類が開けてしまったパンドラの箱である。
 原発と核兵器とを問わず、核開発は一刻も早く停止すべきであり、ここに至ってなお原発の再稼動を企図するなど、地震の犠牲者や原発事故被害者への冒涜であり、正気の沙汰ではない。
 また核開発の背景となった覇権主義や際限のないエネルギーを求める世界のあり方を根本的に変えなくてはいけない。そのためには平和憲法を掲げるわが国こそが、国際対立と紛争の解決に向けた外交努力を積極的に担うべきである。
 また、生物多様性をはじめとする地球環境との共存を生活の基礎とし、経済成長に依存する社会モデルから持続可能な循環型社会への転換を世界に率先して進めるべきである。