案文 |
注と備考 |
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[前文] |
国家間条約の主体が市民であるべきことを表すため、この表現をあえて入れた。 |
日本国憲法及びアメリカ合州国憲法の理念に立脚し、 |
「理念」という表現を入れたのは、特に米側を不必要に刺激することなく、日本国憲法の平和主義を活かす趣旨から。 |
第二次世界大戦後の長期にわたる対立に満ちた国際関係の歴史を再び繰り返してはならないという国際社会の認識を共有し、 |
新しい日米関係のあり方を規定する新条約を構想するのは、それを可能にする新しい国際的条件が生まれつつあることを明らかにする趣旨。 |
国際連合憲章の諸原則が国際関係及び日米関係において遵守されるべきことを確認し、 |
日中平和友好条約(「国際連合憲章の原則が十分に尊重されるべきことを確認し」)を借用。国連が米国に悪用されつつあることを考えると、国連憲章に言及するのはむしろ危険という考え方もあり得るが、憲章の原則そのものは米国の覇権主義を抑制する内容を持っているし、誰もが国連及びその諸原則には反対できないことに着目すれば、ブラス要因がマイナス要因を上回ると考える。 |
民主主義が各国の政治制度の基調となりつつあることを歓迎するとともに、国際関係を規律する原則としてひろく受入れられるべきであると認め、 |
冷戦後の国際関係にとっての最大の脅威は米日共同覇権体制が自己主張することにある。そのことに歯止めをかけるために、米日支配層も表立っては反対できない「国際関係の民主化」原則を盛り込んでおいたらどうか、という趣旨。 |
国際社会が多くの課題に直面していることを厳粛に受け止め、 |
いわゆるグローバル・イッシューズと称される環境・公害、人口・食糧・飢餓・貧困、エネルギー、AIDS・エボラ、南北問題等の諸問題の解決が国際社会共通の重要課題であることを明らかにする趣旨。 |
日米両国及び両国民が以上の国際的原則の尊重及び諸課題の解決に重要な責任を負っていることを自覚しつつ、 |
世界1位・2位の大国の関係は、以上の原則・課題を離れた単純な2国間関係として位置づけることはできないことをはっきりさせておく趣旨。 |
両国間の平和友好関係を新たな基盤の上に発展させるため、 |
日中平和友好条約(「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため」)を借用。 |
平和友好条約を締結することを決定し、このため、次のとおりそれぞれ全権委員を任命した。 日本国 ○○○○ これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。 |
左記は、重々しい条約・協定の決まり文句 |
第1条
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日中平和友好条約第1条1(両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和的共存の基礎の上に、両国間の恒久的かつ民主的な平和友好関係を発展させるものとする。)に、「民主主義及び基本的人権の尊重」を加えた。本項規定には、中国の掲げる平和5原則が入っているが、5原則は日中条約だけでなく米中共同声明(1972年の上海コミュニケ)にも盛り込まれており、米中、日中、そして今、日米の基本関係文書にも盛り込むことで、民主的な国際関係がよって立つ基本原則として位置づける積極的な意味があると考える。 |
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日中平和友好条約第l条2(両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の諸原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力または武力による威嚇に訴えないことを確認する」)を基本的に踏襲しつつ、「相互の関係だけでなく「国際関係」も含めることで、軍事力行使に走ることを抑え込む趣旨。そして紛争だけでなく、「紛争および問題」として紛争にまでいたらない対立などの問題を含むよう範囲を広げた。 |
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この条項により、現行の「日米安保条約」は廃棄される。現行安保条約には「終了の通告」の「後l年で終了する」とあるが、後からの条約が優先するので、この条約が成立すればl年を待たずに終了できる。当然ながら、在日米軍基地はすべて存在しなくなる。 |
第2条
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日中条約第2条(「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する」を借用。いわゆる「反覇権条項」だが、米日支配層の野心を考えるとき、今なお意義の大きい規定なので、入れた。 |
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紛争の軍事的解決には前途がないという90年以来の国際的経験を踏まえ、かつ、その経験から学ぼうとしない米国の行動を国際的ルールに従わせていくようにするための規定。 |
第3条
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日中条約第3条(「両締約国は、善隣、友好の精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する」)を参照したが、その規定内容は同条約第l条1と重複する部分もあり、また、国際的重みの圧倒的に違う日米関係にそのまま持ち込むことは不適当。「国際的相互依存」が米国(及び日本)だけに有利な形でつまみ食いされている現状を是正するため、「国家間の民主的な関係の発展」「国際の平和及び安全の真の確立」という目的に従わせ、かつ、「両国国民を含む国際社会全体の福祉に合致」するという条件にも沿わせる」ことで、新しい日米経済関係の準則を設定する。 |
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この規定には、米国主導(日米主導)の国際経済運営を目指す立場からの抵抗が予想される。しかし国際経済関係の民主化は、政治関係の民主化同様の重要性がある。規定内容については更に推敲の要があるが、この要素自体は何とか盛り込む必要があると思われる。 |
第4条
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日中条約第4条そのまま。別に規定する必要も認めないが、条文3条だけでは淋しすぎるとすれば、こういう無害な規定を入れるのも考慮の余地があるとも考え、入れた。 |
第5条
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現行の日米安保条約の第10条と同じ規定。 |
以上の証拠として、各全権委員は、この条約に署名調印した。 199X年○月○日に○○○○で、ひとしく正文である日本語および英語により本書二通を作成した。 日本国のために アメリカ合州国のために |
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