ニュースの前号でよびかけた「日米平和友好条約」の第一次案をここにお送りします。これは公式には一二月七日の集会(別掲案内参照)で提案され、案として発表されることになります。
この条約案は、世界の政治、経済、軍事などの面で重要な役割を担う日米両国の関係を、あるべき姿にさせようという民衆による提案であり、このような提案は、戦後五〇年の民衆運動の中で初めての試みです。
第一次案は、日米関係の専門家である浅井基文氏(明治学院大学教授)の全面的なご協力を得て、作家の小田実氏とともに市民の意見30の会・東京のメンバーで起草したものです。この案に対するご意見、ご批判、建設的な提案を寄せられるよう期待します。
この条約案について、二、三、補足的な注を述べますと、これは国家間条約の案として提案されるものですから、日米関係と密接な関係があるとはいえ、日本の問題である自衛隊の存在には触れていません。しかし、安保条約が平和友好条約に代えられ、米軍基地がなくなればそれでいい、というわけではなく、当然、自衛隊の解体も問題にされるべきでしょう。どのようにそれを縮小し、防衛費をなくし、最終的に解体するか、そのもつ膨大な施設、資材、人員をどのように処理、あるいは活用すべきかなどは、国内法の問題として別個に立案されなければなりません。すでにその面では、水島朝穂氏(現早稲田大学教授)ら「サンダーバードと法を考える会」によって「ニッポン国際救助隊法(第一次)案」が提案されていますし、中北龍太郎氏ら関西の 運動も「平和基本法」の立案を計画しています。こうした国内法の起案も私たちとしては今後各運動と協力して進めてゆきたいと思っています。
また、現在では日本の国政に関わる国民による直接投票は憲法の改訂だけに限られていますが、安保、自衛隊、原発、死刑といった重要な政策の賛否も直接の国民投票にかけられるような道を開くことも、あわせて検討されるべきでしょう。
もう一つ、この案は、日米の二国間の問題ですが、日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との間には正常な国際関係がまったくないままに放置されており、ロシアなど旧ソ連諸国との間にも平和条約が存在していません。また、韓国との間でも一九六五年の日韓基本条約の見直しが切実な問題となっています。「日米平和友好条約」と同趣旨の条約が、日朝、日ロ、日韓、さらに中国、フィリピン、ベトナムなどアジアの他の諸国との間に起案、調印され、最終的にはこのような平和友好条約の網の目がアジア・太平洋地域を覆うことが目標とされねばならないでしょう。 今回提案される「日米平和友好条約」は、そうした展望をもつ壮大な試みの第一歩としたいと考えています。
今後これをどのような運動として展開すべきかは、一二月の集会で議論されることになるでしょうが、当然これは英訳され、アメリカの平和運動グループ、個人に送られ、検討と賛同を求めてゆかねばなりません。日本では、条約案の趣旨に賛成を求める署名運動や、一定の期間を定めて(例えば、来年の八月一五日なり一二月八日を目標)募金運動を起こし、この案文を日本の全国紙やアメリカの有力新聞に意見広告として発表するということも考えられるでしょう。
一二月七日(関西地区では八日)の集会に多くの方々がご参加下さるよう、強く期待しております。
出典:『市民の意見30の会・東京ニュース』No.39 1996.11.30